低音がもこもこ、ぼわぼわして締まらない。ベースとキックが団子になって、どっちが鳴っているのか分からない。低域だけ、なぜかいつも濁る。
低域は、ミックスの中で一番後回しにされがちな場所です。でも実は、低域をクリアにするだけで、曲全体の印象が劇的に底上げされます。
そして、やること自体は意外と簡単です。ただ、ローカットを入れる前に確認すべき前提が一つあります。「今、何が低域を支配しているのか」を把握すること。ここから始めます。
この記事でわかること
- 低域がもこもこ・ぼわぼわする本当の原因
- ローカットの前に「何が低域を支配しているか」を見る理由
- 低域が濁っているかを確認するチェックリスト
- レベル別の、低域をクリアにする手順
なぜ低域がもこもこするのか

結論から言います。低域がもこもこするのは、低い帯域に、たくさんの楽器の音が無自覚に溜まっているからです。低音を出していないつもりの音も、実は低域に成分を持っています。
ギター、シンセ、ボーカル、パッド。これらは中高域が主役ですが、見えないところで100Hz以下にもエネルギーを出しています。それが全部足し合わさって、低域が飽和し、ぼわぼわになります。
たとえば10トラックの曲で、各トラックが少しずつ低域を出していたら、それが10個積み重なる。一つ一つは小さくても、合計すると無視できない量になります。低域は、人の耳に「位置」が分かりにくい帯域です。だから濁っていても原因を特定しづらく、なんとなくもこもこしたまま放置されてしまうんです。
下のチェックリストで、自分の低域が濁る原因を診断してください。
↓
□ ベース以外のトラックにローカットを入れていない
□ ベースとキックの帯域を、住み分けさせていない
□ 低域に何の音が鳴っているか、把握できていない
□ スペクトラムで低域を見たことがない
□ 低音は「ベースとキックだけ」だと思っている
3つ以上当てはまったら、いきなりローカットを入れる前に、まず低域に「何が」鳴っているかを見るところから始めます。
低域処理の大切さを知らなかった話

正直に言うと、私も最初は、低域の処理がこんなに大切だとは思っていませんでした。耳に目立つのは中高域なので、低域はずっと後回しでした。
でも、ある時きちんと低域を整理してみたら、低音をクリアにするだけで、全体の音が一段階よくなったんです。土台がすっきりすると、その上に乗る中高域まで見通しがよくなる。低域は、家でいう基礎の部分でした。
もっと早く知っておくべきだったと思いました。そしてやることは、想像よりずっとシンプルでした。各楽器ごとに「ここはカットする」という低域の境界を知るだけ。難しいテクニックは要りません。把握して、削る。それだけで低域は締まります。
低域をクリアにする手順

ここからは、レベル別の具体的な手順です。順番が大事なので、上から進めてください。
①DTM初心者:低域に何が鳴っているかを「見る」
初心者がまずやるべきは、削ることではなく見ること。スペクトラムアナライザーを挿し、ベースとキックをミュートして、残りの音だけで低域がどれだけ鳴っているかを確認します。
すると、低音を出していないはずのトラックが、意外と100Hz以下で動いているのが分かります。原因が目で見えれば、対処はぐっと簡単になります。把握が先、処理は後です。
まず、ベースとキックをミュートして、低域がどれだけ残っているか聴いて(見て)みてください。それだけでいいです。犯人が分かります。
②DTM脱初心者:ベース以外に一律ローカットを入れる
脱初心者は、不要な低域を切ります。ベースとキック以外のトラックに、ローカット(ハイパスフィルター)を入れる。これが低域処理の基本中の基本です。
目安は、ボーカルやギターなら80〜100Hz、シンセやパッドなら100〜150Hz以下をカット。その帯域に大事な成分はほとんどないので、切っても音は痩せません。むしろ低域の渋滞が消えて、全体がすっきりします。やることは、各楽器ごとに切る位置を覚えるだけです。
まず、ベース以外で一番低音が出ていそうなトラック1つに、100Hzのローカットを入れてみてください。それだけでいいです。低域が一段クリアになります。
③DTM中級者:ベースとキックを住み分けさせる
中級者は、低域の主役二人を整理します。ベースとキックが同じ帯域でぶつかっていないか確認し、役割を分ける。両方が同じ場所で全力だと、低域は団子になります。
たとえばキックの芯を60〜80Hz、ベースのおいしい所を100Hz前後に振り分ける。片方をEQで少し譲り、片方を立てる。さらにサイドチェインでキックが鳴る瞬間だけベースを軽く凹ませると、両方がくっきり分離して聞こえます。低域に主役を二人置かない、が鉄則です。
まず、キックとベースだけを鳴らして、どちらが低域を支配しているか聴いてみてください。それだけでいいです。住み分けの方針が見えてきます。
住み分けのコツは、片方を「立てたい帯域」で持ち上げ、もう片方の同じ帯域を少し削ることです。たとえばキックの60Hzを少し上げたら、ベースの60Hzを少し下げる。シーソーのように、片方が出たら片方が引く。両方を同時に持ち上げると、必ずぶつかってもこもこに戻ります。低域は椅子取りゲームだと考えると分かりやすいです。
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低域が締まると、曲全体が見違える
低域は、聴いていて一番気づきにくい場所です。だからこそ、ここを整理できる人は意外と少ない。裏を返せば、低域をクリアにするだけで、他の人より一歩抜けた音になります。
難しいプラグインも、高度な理論も要りません。何が鳴っているかを見て、要らない低域を切り、主役を住み分けさせる。この3つだけで、もこもこは締まります。
土台が澄むと、その上の全部が澄んで聞こえます。今日カットした一つのローカットが、曲全体の見通しを変える。低域は、最も地味で、最も効く場所です。
よくある質問(FAQ)
Q. ローカットを入れると、音が痩せませんか?
A. 切る帯域を間違えなければ痩せません。ベース以外のトラックの80〜100Hz以下には、大事な成分はほとんどありません。むしろ不要な低域が消えて、主役の低音がはっきりします。
Q. ベースとキック、どちらを下にすればいいですか?
A. 曲によりますが、キックの芯を一番下(60〜80Hz)に、ベースをその少し上(100Hz前後)に置くのが基本です。ジャンルによって逆もあります。大事なのは、二人を同じ場所で全力にしないことです。
Q. アナライザーがなくても処理できますか?
A. 耳だけでも可能ですが、低域は耳で判断しにくい帯域です。最初は目で見たほうが圧倒的に速く、確実です。多くのDAWに標準で付いているので、まず挿してみてください。
Q. あなたは今、どこで止まっていますか?
A. ①低域に何が鳴っているか見ていない/②ベース以外にローカットを入れていない/③ベースとキックが住み分けできていない。どこで止まっているかが分かれば、直す順番も決まります。
まとめ:まず低域に何が鳴っているか見る

今日読んだことを、あなたのもこもこした低域に当てはめると、最初に「見る」べきトラックはどれですか?
低域がもこもこするのは、低い帯域に複数の音が無自覚に溜まっているから。ローカットの前に、何が鳴っているかを見る。ベース以外を切り、主役を住み分けさせる。やることはシンプルですが、効果は曲全体に及びます。低域は、最も地味で最も効く場所です。
あなたの曲の土台が澄んで、その上の音が、まっすぐ立ち上がりますように。
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