同じDAW、同じくらいのプラグイン。なのに、プロの曲と自分の曲を並べると、どうしようもなく素人くさい。何が違うのか、言葉にできない。
多くの人は、この差を「機材」や「テクニック」だと考えます。でも、もっと根っこにある原因があります。プロとの差は、プラグインの数ではなく「耳の基準」です。
正しい音の状態を知らなければ、自分の音のどこが間違っているかも分かりません。直し方の前に、ゴールの音を知っているかどうか。ここから話します。
この記事でわかること
- 曲がプロっぽくならない、本当の原因
- 差は「プラグイン・技術」ではなく「耳の基準」だという話
- 自分に耳の基準があるかを確かめるチェックリスト
- 耳の基準を作る、具体的な聴き方のトレーニング
なぜ曲がプロっぽくならないのか

結論から言います。曲がプロっぽくならないのは、「正しい音がどんな状態か」を耳が知らないからです。ゴールを知らずに走っているようなものです。
プラグインは、あくまで音を変える道具です。でも「どこへ向けて変えるか」を決めるのは耳。基準がなければ、高価なEQを持っていても、どこをどう動かせばいいか判断できません。
下の5つに当てはまるほど、技術ではなく耳の基準が足りていません。確かめてみてください。
↓
□ プロの曲と自分の曲の「違い」を言葉で説明できない
□ EQを動かしても、良くなったのか分からない
□ 音量バランスを「なんとなく」で決めている
□ リファレンス曲を並べて聴く習慣がない
□ 普段、同じジャンルの曲しか聴いていない
3つ以上当てはまったら、次に買うべきはプラグインではありません。必要なのは、正しい音をインプットする「聴く時間」です。道具を増やす前に、基準を増やす段階にいます。
高いプラグインを買い漁っていた話

正直に言うと、私も昔は「プロっぽくならないのは機材のせいだ」と思っていました。有名なコンプ、評判のいいEQ、高価なリバーブ。次々に買い揃えました。
でも、音は一向にプロに近づきません。当然です。道具は増えても、正しい音を知らないまま使っていたからです。ゴールが見えていないのに、道具だけ豪華になっていく状態でした。
転機は、プラグインを買うのをやめて、ひたすら曲を聴くようにしたことです。好きな曲を何百回も聴き、さらに普段は聴かないジャンルにも手を出しました。すると、ある日突然、自分の曲の「物足りなさ」が具体的に聞こえるようになったんです。
「低音が前に出すぎている」「高域がこもっている」。それまで漠然と素人くさいとしか感じなかったものが、具体的な言葉になった。基準ができて初めて、持っていたプラグインが意味を持ち始めた瞬間でした。
面白いのは、その後ほとんど新しい機材を買っていないことです。前から持っていた標準的なEQとコンプだけで、音は明らかにプロに近づいた。変わったのは道具ではなく、その道具を「どこへ向けるか」を決める耳のほうでした。お金で解決しようとしていた問題は、本当は時間と聴く量で解決する問題だったんです。
耳の基準を作る方法

ここからは、耳の基準を育てる具体的なトレーニングです。プラグインの操作より先に、これをやってください。
①DTM初心者:耳の基準になる曲を1曲だけ決める
初心者がまずやるべきは、「これが正解」と思える曲を1曲だけ決めること。何十曲も聴き比べる前に、まず1曲を基準として固定します。
基準が定まっていないと、聴くたびに感想がブレます。同じ1曲を繰り返し聴くことで、耳の中に「正しい音の物差し」ができていきます。曲は好きで、何百回聴いても飽きない1曲を選んでください。
まず、今一番好きな曲を1曲選んで、プレイリストの一番上に固定してください。それだけでいいです。これから聴く全ての曲を、この1曲と比べる耳ができ始めます。
②DTM脱初心者:好きな曲を「分解して」聴く
まず大前提として、圧倒的に多くの曲を聴くこと。それも好きな曲を、何度も聴きまくる。これが基準作りの土台です。
ただ流すのではなく、1曲を要素に分けて聴きます。1回目はキックだけを追う、2回目はボーカルの位置だけ、3回目は左右の広がりだけ。同じ曲を役割ごとに聴き直すと、プロが何をしているかが立体的に見えてきます。
まず、一番好きな曲を1曲、今日は「キックの音」だけに集中して聴いてみてください。それだけでいいです。普段聞き流していた要素が、輪郭を持って聞こえてきます。
③普段聴かないジャンルを、あえて聴く
好きな曲だけでは、基準が偏ります。だから普段まったく聴かないジャンルを、あえて聴く。クラシック、ジャズ、民族音楽、なんでもいい。
なぜか。普段見えていない視点が浮かび上がってくるからです。たとえばジャズの生々しい空気感を知ると、自分の曲がいかに作り物っぽいかに気づく。違うジャンルは、自分の死角を教えてくれる鏡になります。
まず、これまで一度も再生したことのないジャンルを1曲、最後まで聴いてみてください。それだけでいいです。「自分の曲に無いもの」が一つ見つかれば成功です。
④DTM中級者:リファレンスと自分の曲を即比較する
中級者は、基準を制作の中に組み込みます。作業中、目標のプロ曲を同じDAWに並べて、ワンクリックで切り替えて聴く。これをリファレンスといいます。
このとき、音量を必ず揃えること。人は音が大きいほうを「良い」と錯覚します。リファレンスと自分の曲のラウドネスを合わせて比べて初めて、純粋な質の差が見えます。差が見えたら、その1点だけを直す。
比較は、スピーカーだけでなく、スマホのスピーカーや安いイヤホンでもやってください。プロの曲は、どんな環境で鳴らしても破綻しません。自分の曲だけが特定の環境で急にしょぼく聞こえるなら、そこが弱点です。再生環境を変えるたびに、新しい差が見えてきます。
まず、目標のプロ曲を1曲、自分のプロジェクトに読み込んで、音量を揃えて並べてみてください。それだけでいいです。比べた瞬間に、次に直す場所が分かります。
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耳が育てば、今ある機材で十分プロに近づく
プロっぽくならないと悩むとき、つい「もっと良い機材があれば」と考えます。でも、本当に足りないのは外側の道具ではありません。
正しい音を聞き分ける耳さえ育てば、今持っているプラグインで驚くほど音は変わります。プロが安い機材でも良い音を出せるのは、ゴールが完璧に見えているからです。
耳は、聴いた量の分だけ育ちます。今日聴いた1曲、明日聴く1曲が、あなたの基準を1ミリずつ押し上げていく。その積み重ねが、ある日「自分の曲が変わった」と感じる瞬間を連れてきます。機材より先に、耳に投資してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 結局、高いプラグインは必要ないんですか?
A. 不要ではありませんが、優先順位の問題です。耳の基準がない状態で高級プラグインを買っても、使いこなせません。まず基準を作る。そのうえで、足りない一つを買い足すほうが、無駄な出費がぐっと減ります。
Q. 何曲くらい聴けば耳は育ちますか?
A. 明確な数字はありませんが、「分解して聴く」習慣がつくと、量より質で加速します。漠然と100曲流すより、1曲を要素ごとに10回聴くほうが効きます。毎日1曲、集中して聴くだけで数ヶ月後に変化を感じます。
Q. リファレンスを真似ると、パクリになりませんか?
A. なりません。真似るのはメロディや展開ではなく、音のバランスや質感です。これは料理で言えば味の濃さを参考にするようなもの。盗むのではなく、正しい状態を学ぶための基準として使います。
Q. あなたは今、どこで止まっていますか?
A. ①違いを言葉にできない/②聴く量・ジャンルが足りない/③リファレンス比較を制作に組み込めていない。どこで止まっているかが分かれば、伸ばすべき聴き方も決まります。
まとめ:今日は1曲、分解して聴く

今日読んだことを、あなたの次の制作に当てはめると、まず何を「聴き直し」ますか?
プロっぽくならないのは、機材のせいではありません。正しい音を知る「耳の基準」がまだ育っていないだけ。好きな曲を分解して聴き、普段聴かないジャンルに触れ、リファレンスと並べる。耳が育てば、今ある機材のままで音は変わり始めます。
あなたの耳が育った先に、いつか誰かの胸を打つ音が鳴りますように。
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